作家として活躍する卒業生インタビュー

interview 06

比留間 郁美
陶芸作家
比留間 郁美
2003年 学部 陶卒業

オリジナリティの世界観を
土で作り上げるアーティスト

作家活動のきっかけと、作家として活動してみての感想を教えてください。

小さなころから身近な素材で王冠やテディーベアなど何かを作っている子供で、作って人にあげることが大好きでした。当時、テレビドラマなどでOLさんなどが働く姿を見ながら、私にはとても生きづらそうな世界だなと思ってもいたので、中学生のころから漠然とこれからの時代を好きな場所で自由に生きるために手に職をつけようと思っていました。そして美術大学への進学を決め工芸学科を目指し、1年生の時に織、染、陶、ガラスを体験出来る女子美術大学に出会いました。陶芸と心に決めてからは没頭してそのまま陶芸を続けています。

作品
作品

実際に取り組まれたお仕事と現在の主な活動内容を教えてください。

現在は、奈良の奥大和へ移住し窯を作り、個展を中心とした作家活動をしています。
主に和と洋を掛け合わせたようなティータイムの器や、動物のテーブルランプなどを作っています。

工芸専攻を選択し、今に至った経緯を教えてください。

昔から美術館に行くことが大好きなので、現代美術や様々な美術作品を見て影響を受けてきました。中でも、ナポレオンや国の宝物のような工芸展を見るととても感動していました。
ただ自分の意志だけではなく、王のために命がけで作る作品の魂の籠った工芸品に何故か惹かれます。マイセンの歴史のようにそこにはもちろん悲しくつらい作家の出来事も沢山あるのですが、そこで生み出された奇跡のような工芸作品に触れる事が何よりも感動します。誰かの手にわたるものを作るという工芸作家の世界がとても私の心と合っていると思っています。

作品
作品

学生生活のなかでのターニングポイントを教えてください。

ユニークな同級生と沢山出会い刺激を受けた事です。最も多感な時期に面白い人たちと一緒に世界中を旅して、いろいろな新しい感覚や自分を発見できた事は何よりも宝物だと思っています。旅の記憶が今でも一番の制作のインスピレーションになっています。
古美術研究という授業で、奈良の若宮おん祭の遷幸の儀に参加させていただいた事も、現在奈良で暮らしている一番の理由なのでこれが人生のターニングポイントかもしれません。

女子美で学んだことが、どのように活きていますか。

轆轤の練習中に、急須が出来るようになれば技術が習得できるという話を聞き、在学中は急須ばかり作っていました。卒業制作も急須5個という、ひたすら急須作りの日々でした。
急須作りの上手な先生をご紹介いただいたり、常滑で様々な急須づくりのプロの方を見せていただいたりと、本当に幸せな学生だったと思っています。今の制作の基礎と制作の楽しさを教えて頂きました。そして、興味を持っていなかった技法や他のジャンルの技術をいろいろ体験させていただいた事も本当に活かされています。

今後について、どんなことを考えていますか?

昨年、新たにアメリカ人の友人の協力の元、ガス窯を作り、ソーダ釉という初めての技法に挑戦できるようになったので、これから研究を重ね自分なりの新しい陶芸を模索しながら、軽やかに様々な方に見てもらえるような食器作りを続けていきたいなと思っております。

※2023年時点のインタビューです。