作家として活躍する卒業生インタビュー

interview 04

河野 香奈恵
染織作家
河野 香奈恵
2009年 学部 織卒業

イメージと技術が結びついてこそ
「自由」になった

入社のきっかけと、入社後の感想を教えてください。

卒業後も制作を続けたい気持ちはありましたが、まずは自立を目指し、夢のひとつであった「デザイナーになること」を叶えようと就職を決意しました。刺繍レースの会社を選んだのは、学んできた工芸と近いところにあると感じたからです。自分が携わった商品が店頭に並んでいるところを両親に見せることができた喜びは大きかったです。

作品
作品
制作風景
制作風景

実際に取り組まれたお仕事について教えてください。

会社では刺繍レースや刺繍生地のデザインをしていました。
完成したデザインを売り込みに行くこともあれば、要望に合わせてデザインを起こすこともあり、なかでもコレクションブランドとの仕事は独特なデザインが多く難易度も高いため、こちらのセンスが問われる瞬間でもありました。苦労も多かった分大きな剌激を受け、今日に繋がっています。

工芸専攻を選択し、今に至った経緯を教えてください。

初めて織に触れたとき、自分に合った表現方法を見つけたと思いました。実際に学び始めると工芸の世界は奥深く、表現したいことは頭の中にあるのに、技術が追いつかず、もどかしい気持ちになることもありました。追っても追っても手に入らない。だからこそ卒業後も続けて来たのかもしれません。今は技術面と作りたいイメージがようやく結びついて自由を感じますし、作ることがとても楽しいです。

制作風景
制作風景

学生生活のなかでのターニングポイントを教えてください。

ひとつは織に出会ったこと、もうひとつは工芸の仲間たちと一緒に過ごせたことです。以前の私は制作にも人にも真っ直ぐに向き合えないところがありました。しかし、技術の習得には正面から取り組まなければならない状況で、仲間たちと長い時間を過ごし制作する中で笑ったりぶつかったりしながら心が解けていくのを感じました。人との向き合い方のベースが学べたと思っています。

女子美で学んだことが、どのように活きていますか。

女子美の四年間で得た美術の基礎があることで自信を持って仕事をすることができました。また、今でも行き詰まったり迷ったりした時には先生方から頂いた数々の言葉を思い出すようにしています。そこにはたくさんのヒントがあり、今でも道を示してもらっています。あとは女の子しか居ない環境で過ごしたため、力仕事でも何でも自分で行動する力がついたところでしょうか。

今後について、どんなことを考えていますか?

現在は染織作家として活動をしています。
力を注いできた作品の展覧会を控え、まずはそこに集中したいです。そしてこれまでは着物や帯といった作品が中心でしたが、今後は伝統から少し離れた領域にも制作の幅を広げて、海外コンペにも挑戦していきたいですし、デザイン経験を生かした独自の織物が展開できるようにと日々考えています。

※2023年時点のインタビューです。