大学院 工芸研究領域

染・織・刺繍・陶・ガラスの5領域に分かれ、
それぞれの素材に対しての知識を深め、
創作研究活動者としての確かな技術の研鑽と
オリジナリティある作品づくりを目指します。

今までに習得した専門的な技法や制作に対する姿勢と方向性を多様に駆使して、より専門性の高い魅力ある作品を生み出し、新たな視点で創作を構築する場です。そのために、様々な表現方法を通して伝統と先端など対峙するテーマを考え、染の総合力を養うことが必要です。これらを踏まえて、学生は主体的造形と独自性のある表現を追求し、作品は「機能としての布」や「芸術としての布」、「伝統」と「現代」、「素材と表現」等の意味づけを明確化します。また、染色文化の一端を担うといった意識を持って、社会に発信できる創作研究を目標にします。

< 院生作品 >
橋本 亞里須
デジタルプリントを用いたインテリアファブリックスのデザイン展開

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〔デザインと工芸の融合〕
現代における生活環境において、インテリアのデザインはコスチュームファッションと同様にもっと自由に個人の個性を反映したものであっていいと考えます。住空間を対象とした染色テキスタイルはアートとして大胆な造形表現が可能です。
現在のインテリアファブリックスメーカーにおける量産型製品は、多様な価値観の混在する現代社会において、マーケティングに対応した物作りによる以上、造形表現には限界があるのではないかと思います。個人的な思考を反映するファッションと同様にインテリアファブリックスも又、自由で個性のある物を創造していくべきと考えます。 そのような中でデジタルプリントは小ロット対応が可能であり、工芸作品にも用いられる重要なメディアであると考え現代のインテリアファブリックスを研究しました。

〔作品1.色彩推移 作品2.造形推移 作品3.生命推移〕
今回の作品では色彩、造形、自然が移り変わり推移することをテーマとしました。
〔作品1.色彩推移〕は、自然をモチーフとしており、原野の自然風景を抽象化し、ストライプで構成しました。〔作品2.造形推移〕は、空や宇宙の奥行きをイメージし幾何的な楕円で表現しました。〔作品3.生命推移〕は、自然の具象的イメージとして花をモチーフにしました。これら全てのデザインはパソコンで造形構成したもの、撮影した写真、手描きの原稿などを元にデジタル処理し制作しました。
デジタルプリントは使用出来る色数が無限に近く、グラデーションでデザイン構成をする上で、従来の染色方法では表現できない効果を発揮することが出来ました。
今回は試みとしてデジタルプリント上にシルクスクリーンプリントを重ねることで付加価値を加えた案も試作しました。 ポリエステルを素材とした縦2.5m、横2mの作品及び、綿ローンを素材とした幅1m、長さ10mの作品を制作しました。

大学で学んだ専門教育を基に、さらに高度な創作活動を目指して各自の研究テーマにそって新しい表現を研究していきます。絣や天然染料による染色など伝統的な染織技法による着物から、織物組織や特殊加工による染色など伝統的な染織技法による着物から、織物組織や特殊加工によるオリジナルファブリック、柔軟な発想で素材の魅力を引き出すテキスタイルアートの制作まで幅広い織の分野に対応します。素材の特色を生かし、発想から独自技法へと展開していく過程で常に考察することが、新しい表現を生む重要な要素です。伝統と現代を追求しながら多様化する現代に対応したデザイン・造形表現のため、素材や技術の新たな挑戦を目指します。

< 院生作品 >
原 祥子
流れゆくもの
自然が作り出す形や模様は、私にとって最も親しみ深い「美」である。雪の結晶や水面に広がる波紋のように成長し広がってゆく力強さを感じると同時に、一瞬で形を変えてしまうという儚さも感じられる。移ろう一瞬の美が、見る者を感動させてくれると思い、「自然が作り出す情景」をテーマに制作をしてきた。
美しい風景に対して「織り成す」という表現が使われることがある。人の心を奮わせる情景は一つの自然物だけでは成り立たず、個々が少しずつ積み重なり形になっていく。この成り立ちが織で制作することと共通していると感じ、技法の一つである「崩し織」で表現した。
崩し織とは平織であるにも関わらず、コントラストのある2種類の経糸を交互に配置させ、緯糸との交差により細かな縦縞や横縞模様が現れる。色の効果や糸の浮き沈みによってできあがる模様は「自然の情景」と重なった。
今回、自然界から見出した「流れるもの」「移り変わるもの」を題材に、オリジナルの崩し織を使用して着物三点を制作した。今では見ることの無い風景、生活や習慣を思い出す糸口になることを期待する。

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『空を見上げる』
夕暮れ時、微睡み始めた空に鰯雲が浮かんでいる。赤い西日の光が雲にあたり朱や黄に染まっている情景を表現した。
『秋蚕の記憶』
昔、私の郷里では養蚕と稲作を同時に行っており、今でも多くの人が稲田を見ると蚕を育てていた事を思い出す。風が吹いて稲田が揺れている情景を表現した。
『冬の朝』
氷片が変化してできる霜は植物のような力強さを感じるが、日が当たり温かくなると瞬く間に消えてしまう。霜が降りた白色の窓が少しずつ溶けて行く様子を表現した。

刺繍

本研究領域では、伝統的な技法について研究を行い、日本刺繍の特質を考察することを出発点とします。その上で各自が、伝統の継承やその新しい展開を視野に入れながら創作研究を行い、糸による表現の可能性を模索しながら創作研究を行うなどの方向性を決めて、明確な姿勢をもって制作に取り組みます。現代の刺繍には、多分野の技法が混在し素材も制約されないミックスド・メディアという表現領域が存在しますが、コンピュータデザイン対応のミシンによるデジタル刺繍や欧米で主流となっているミシンによる表現にも対応できる設備があり、これらの研究も行います。また、現在、日本刺繍に関する知識と技術は、染織文化財の修復分野で活かされています。この分野での高度な専門性を身につけた人材育成ために、染織品の保存修復に関わる研究内容が含まれた「染織品保存修復演習Ⅰ・Ⅱ」が必修となっています。本学染織コレクションは、この科目の資料としても活用されています。

< 院生作品 >
藤田 千鶴
「モダン×奇譚」(スカーフ)、「ロマン×奇譚」(バッグ)
「大正ロマン」は、大正時代の雰囲気を伝える思想や文化事象を指して呼ぶ言葉で、明治時代に日本が受容した西洋の意匠や文化の影響を受け、日本人の美意識、伝統を融合させた生み出された新たなスタイルであると考えます。
昨今、この時代を知らない世代は、その甘美でセンチメンタルな哀愁を感じるデザインに目新しさを感じ、専門誌が刊行される程「レトロスタイル」が流行の兆しを見せています。
大正ロマンの洗練された意匠に、ポップでリリカルな色使いは私が制作していく上での指標となっており、古いものに魅かれるのは、今自分が求めている色や形がそこにあるからだと思います。
この特徴的な配色や形をヒントに、染織品の普遍的なモチーフである、花から葉脈や花弁の曲線を抽出しその造形の特徴を、バッグとスカーフをデザインしました。
バッグ・スカーフどちらも、大正ロマンのデザインに見られる配色方法を用いて、対象的な色相、明度、トーンを使用して明快なコントラストを生み出し色彩的に目立ち印象に残るように着彩しました。
バッグは、一枚の花弁を表現するために角を無くし女性らしい丸みのあるオリジナルの型を作成し、4点のバッグの統一感を出すために生地の色彩トーンを揃え、花のそれぞれの特徴を表現するために異なる刺繍技法を使用した結果、日本刺繍の幅広さを表現する事が出来ました。

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バッグに合わせたスカーフには、花弁の柔らかな曲線を表現する手段としてマシン刺繍のフリーモーションステッチを加えました。画面を4分割し、それぞれの色を変え1枚のスカーフでも装い方によって変わる色を楽しんでもらえるように工夫しました。
大正ロマンの配色方法と現代の生活にあったデザインで新たなロマンの構築を目指し、多くの方々の目に触れ、服飾品として手軽に使用できるバッグとスカーフを制作しました。

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陶についての知識・表現方法を一通り修得した人が、さらに進んで研究を行う場です。陶の特徴は「粘土や釉」を「焼いて作る」という点です。「粘土や釉」の部分は、素材作りということに対応しています。日本および世界の土石原料を用いて、造形素材である粘土や釉が調合され、多種の陶素材が作り出されています。「焼いて作る」という部分は、焼成方法と成形方法に対応します。焼成方法は、窯の様式・焼結温度・還元度合などの要素があり、それらの条件のありかたによって陶の物質感が大きく変化します。成形方法では、研究者が自らの身体によって素材を扱うことが要点であり、技術向上・技術応用・新技法考案などの観点が挙げられます。これらの事柄が互いに密接に関連することで、様々な胸が作り出されるのです。多くの先人たちが優れた成果を出しています。伝統ある分野ですのでその歴史をふまえて、自分はどのような点に問題意識があるのかを明確にし、密度の濃い充実した研究を実現してください。

< 院生作品 >

八木 緑日里
五代目
自分の苗字と同じ音である山羊をモチーフとし、新しいヤギ像を探求してきた。
山羊といえば、どんなイメージを思い起こすだろうか。
文化的には古くから生け贄として使われ、キリスト教文化では悪魔の象徴というイメージが強い。自然界では捕食される動物であり、弱い立場にある。また白い髭を持つ容姿から、老いたキャラクターとして扱われることもある。山羊独特の楕円の瞳孔が不気味で怖いという人も多いようだ。
しかし、意外な山羊の側面もある。断崖絶壁に生息し、ほぼ垂直の崖を縦横無尽に駆け巡る驚異的な身体能力だ。種によっては150㎝を飛び越え、時速40㎞/hで走る。楕円の瞳孔の視野はほぼ360度。家畜としては牛や豚より生命力が強く、過酷な環境においても耐えることができる。
そんな山羊の野性的な力強さを全面に押し出し、弱い・生け贄・老いといったイメージを払拭させようと考えた。角は太く力強くし、セックスシンボルと言われる髭や毛並みを誇張して、ありえない骨格にする。けれども顔には山羊のもつ笑ったような表情を持たせる。
猛々しく、堂々と。でも、少し奇妙で愛嬌のあるヤギ。
八木のつくる、新しいヤギ像である。

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ガラス

本研究領域では、熔融ガラス・鋳造ガラスなどの手法によって透明・不透明など様々な表現を持つガラス素材をいかに自分の表現したいものに反映させていくかを実際の制作活動を通し、研究していきます。
数ある工芸素材の中でガラスの特異な面は、ガラスという素材が自然には存在せず、人工的に作り出さねばならない素材であるという点です。ですからガラスで制作するときにはまず、どんなガラス素材を生み出して自作品に用いるかを最初に考慮に入れなければなりません。しかし素材から作り出すということはガラス創作における醍醐味でもあるといえます。造形を思考すると同時に独自のガラス素材表現も思考することが必要不可欠であり、そのためのたゆまぬ調査研究や実験制作が求められます。その上で主体的に自己と他者の関係を確立し、物質および精神の両面において必要とされる作品を作りだすことが創作の原点となるでしょう。
専任教員
  • 荒 姿寿 Shizu Ara
  • 渡邊 三奈子 Minako Watanabe
  • 大﨑 綾子 Ayako Osaki
  • 工藤 直 Nao Kudo
  • 吉田 潤一郎 Yoshida Junichiro
客員教授
  • 山本 清 Kiyoshi Yamamoto
非常勤講師
  • 阿部 みよ子 Miyoko Abe
  • 深津 裕子 Yuko Fukatsu
  • 田中 淑江 Yoshie Tanaka