手びねり | 陶土 | 97×57×97cm
自分の苗字と同じ音である山羊をモチーフとし、新しいヤギ像を探求してきた。山羊といえば、どんなイメージを思い起こすだろうか。文化的には古くから生け贄として使われ、キリスト教文化では悪魔の象徴というイメージが強い。自然界では捕食される動物であり、弱い立場にある。また白い髭を持つ容姿から、老いたキャラクターとして扱われることもある。山羊独特の楕円の瞳孔が不気味で怖いという人も多いようだ。しかし、意外な山羊の側面もある。断崖絶壁に生息し、ほぼ垂直の崖を縦横無尽に駆け巡る驚異的な身体能力だ。種によっては150㎝を飛び越え、時速40㎞/hで走る。楕円の瞳孔の視野はほぼ360度。家畜としては牛や豚より生命力が強く、過酷な環境においても耐えることができる。そんな山羊の野性的な力強さを全面に押し出し、弱い・生け贄・老いといったイメージを払拭させようと考えた。角は太く力強くし、セックスシンボルと言われる髭や毛並みを誇張して、ありえない骨格にする。けれども顔には山羊のもつ笑ったような表情を持たせる。猛々しく、堂々と。でも、少し奇妙で愛嬌のあるヤギ。八木のつくる、新しいヤギ像である。