織 院生作品

原 祥子

『流れゆくもの』

自然が作り出す形や模様は、私にとって最も親しみ深い「美」である。雪の結晶や水面に広がる波紋のように成長し広がってゆく力強さを感じると同時に、一瞬で形を変えてしまうという儚さも感じられる。移ろう一瞬の美が、見る者を感動させてくれると思い、「自然が作り出す情景」をテーマに制作をしてきた。美しい風景に対して「織り成す」という表現が使われることがある。人の心を奮わせる情景は一つの自然物だけでは成り立たず、個々が少しずつ積み重なり形になっていく。この成り立ちが織で制作することと共通していると感じ、技法の一つである「崩し織」で表現した。崩し織とは平織であるにも関わらず、コントラストのある2種類の経糸を交互に配置させ、緯糸との交差により細かな縦縞や横縞模様が現れる。色の効果や糸の浮き沈みによってできあがる模様は「自然の情景」と重なった。今回、自然界から見出した「流れるもの」「移り変わるもの」を題材に、オリジナルの崩し織を使用して着物三点を制作した。今では見ることの無い風景、生活や習慣を思い出す糸口になることを期待する。

『空を見上げる』

夕暮れ時、微睡み始めた空に鰯雲が浮かんでいる。赤い西日の光が雲にあたり朱や黄に染まっている情景を表現した。

『秋蚕の記憶』

昔、私の郷里では養蚕と稲作を同時に行っており、今でも多くの人が稲田を見ると蚕を育てていた事を思い出す。風が吹いて稲田が揺れている情景を表現した。

『冬の朝』

氷片が変化してできる霜は植物のような力強さを感じるが、日が当たり温かくなると瞬く間に消えてしまう。霜が降りた白色の窓が少しずつ溶けて行く様子を表現した。

崩し織・変化組織 | 絹 | 180×140cm 3点

夕暮れ時、微睡み始めた空に鰯雲が浮かんでいる。赤い西日の光が雲にあたり朱や黄に染まっている情景を表現した。

昔、私の郷里では養蚕と稲作を同時に行っており、今でも多くの人が稲田を見ると蚕を育てていた事を思い出す。風が吹いて稲田が揺れている情景を表現した。

氷片が変化してできる霜は植物のような力強さを感じるが、日が当たり温かくなると瞬く間に消えてしまう。霜が降りた白色の窓が少しずつ溶けて行く様子を表現した。